K-POPとESG
夏休み明けの最初の週末、娘らとともにNiziUのコンサートツアー「NiziU Live with U 2022 “Light it Up”」(@東京・代々木体育館)に行ってきました。NiziUは、9人のメンバー全員が日本国籍でありながらも、所属は、BTSやTWICEなどを輩出している韓国の大手音楽プロダクション・JYPエンターテイメントです。そんな解説はいまさら不要と感じる人も多いと思いますが、ニジューを良く知らないシジュー、ゴジューより上の世代の人のためにも、念のため補足!
しかし、私自身がコンサートに足を運ぶのが20年超ぶりだったこともありますが、本当に隔世の感があります。「コンサートに行くのに、ペンライトが欲しい」と娘に言われ、100均のペンライトをイメージしながら「そんなの、全然買ってあげるよー!」とニッコリ即答した私が大きな衝撃を受けたのが、「NiziU公式ライトスティック」というもの…。お値段、なんと¥5,500! 電池は別売りになりまーす(汗)! 「コンサート以外に、どこで使うの?」と、ついつい、コスパの観点から躊躇しましたが、下の娘が「私は、いらなーい」という神がかった発言をしてくれたので胸をなでおろし、1つ購入して約束を果たしました。
このライトスティック、コンサート会場内で電波で一斉に、色や光り方をコントロールするもので、入場前に「電波チェック」をする場所も設けられています。こうした「デジタル化」は、チケットもそう。複数枚チケットを買ったら、入場する人すべての氏名を入力し、事前に各入場者のスマホにチケットを「分配」しなければなりません。小さなお子さんなど、個人でスマホを持たない人は、「チケット不備」のコーナーで、スマホを持ったチケット購入者とともに確認した上で入場するなど、徹底したデジタルチケット管理がなされており、一昔前には必ずいた「ダフ屋」の姿は全く見かけませんでした。
JYPエンターテイメントは先月、韓国芸能事務所として初めて「ESGレポート」を発行しています。たくさんの「ケミカル」な廃棄物を生み出す安価なペンライトが消えたのも、そうしたESGの取り組みの一環に違いない! そう思ってJYPエンターテイメントのサイトにとんだのですが、レポートそのものは現時点で韓国語ONLYでしか発行されておらず、何が書かれているかが読めません! なるほど。これが、企業のIRなどで良く言われる、海外投資家との間の「情報格差」というものか。逆の立場に立って見て、改めて企業情報の「英訳」の重要性を再確認しました。
それでも読みたい、とAI翻訳を駆使したところ、JYPエンターテイメントは、2021年に本社で録音したアーティストの全音源の100%再エネ化を達成し、韓国内エンターテイメント業界で初めて「RE100」に参画した企業となっているほか、営業利益の3%をCSR活動に使用し、世界の難病治療支援に寄付をしていることなどがわかりました。企業としてのガバナンスも、2022年には新たに女性の社外取締役を選任し、女性取締役比率が25%となったほか、社外取締役比率も50%に高め、2022年にはESG委員会も設立されています。社内食堂では、一人ひとりがマイタンブラーを使用するような取り組みも進めているそうです。NiziUのライブでも、メンバーがストローで適宜、水分補給をする姿が遠目に見られましたが、ボトルやストローは、もしかするとプラスチック製ではなかったのかもしれません。
K-POP業界の大手企業が、こうしたESGへのコミットメントを打ち出すことは、その所属アーティストが持つ影響力を考えると、非常に大きなインパクトになるように思います。と同時に、大きな影響力を持つからこそ、もっと積極的に打ち出してほしいとも思います(もちろん、グリーンウォッシュ、ESGウォッシュとならないことが大前提ですが…)。コロナ禍のライブでは、観客は声を出せないため、一つひとつの観客椅子に、じゃばら折りで作れるクラッパー(拍手のかわりに大きな音が出せる)が配布されていました。これもリサイクル可能素材とかだったりすると、廃棄物のさらなる削減になるかもしれません(素材についての説明文などはなし)。
NiziUについては、年内に東京・大阪でのドーム公演も発表されました。高価なライトスティックのコスパ向上のためにも(笑)、もう一度行けるといいなと思います。ちなみに、100均で買えるペンライトは、中にサイリウムという化学物質が入っており、その廃棄の仕方については、各自治体で異なるそうです。しかも、ペンライトの廃棄方法をHP等で説明している自治体は少なく、個別に確認する必要があるそうです。
(佳)