東芝から見える日本型コーポレートガバナンス

2020年7月の㈱東芝の株主総会運営に関する調査報告書は、東芝と経済産業省が一体となって海外の物言う株主(アクティビスト)の議決権行使に対し、不当な圧力をかけていたと結論づけた。

東芝は防衛装備など日本の安全保障に関係する事業も行っているので、外為法に基づき海外投資家が1%以上投資する場合、政府の事前審査を受けるのは理解できる。一方で、審査をクリアしてすでに株式を持つ投資家がリスクマネーを投じた会社の経営方針に対して、物を言うのは発行体として覚悟すべきこと。今回の調査報告書の内容が真実であるとすれば、耳の痛い投資家との議論から逃げ回り、最終的に省庁に頼る逃げの手は、元IR(Investor Relations)経験者としてとても違和感を覚える。

また、日本のコーポレートガバナンス改革の旗振り役である経済産業省が民間企業と密に連携して事に当たる「日本型コーポレートガバナンス」の姿は、海外投資家にどのように映るのだろう。菅政権が掲げる「国際金融センター」構想は空しく見えてくる。

東芝は明日25日(金)に定時株主総会を開催する。問題の株主総会から1年が経ち、真摯に株主と対話する姿勢があるのか、経営陣の発するメッセージに注目したい。