NVIDIAの時価総額が世界初の4兆ドル超え
先日、米半導体大手NVIDIAの時価総額が世界で初となる4兆ドル(約590兆円)を突破した。トヨタ自動車やソニーグループなど日本株の時価総額上位10社の合計(約190兆円)の3倍以上である。AI革命の中心銘柄として、投資家から高い評価を集めている背景には、ChatGPTの登場を機に生じたデータセンターの市場拡大がある。
NVIDIAの決算資料から売上内訳をみると、データセンター向けGPU(Graphics Processing Unit)が約90%を占める。優れたAIを開発するためには、大量のデータを学習させてAIをトレーニングさせる必要があるが、NVIDIAが開発したAI処理に特化した半導体GPUがChatGPTの学習に大量に使用されるなど、すでにAI業界の標準となっている。AI向け半導体市場の覇権を握るに至ったNVIDIAの強さの源泉は大きく2つある。
1:ハードウェア(GPU)の優位性
もともとGPUはゲーム用途などで使用される画像処理半導体であった。グラフィックス性能をあげるには並列演算の処理能力をあげる必要があるが、この並列演算がAIの効率的な学習に適していることがスタンフォード大学などの研究で明らかとなった。これを機に、NVIDIAは生成AIに特化したGPUの開発に経営資源を集中し、業界標準の座を確立した。また、生産面では製造投資負担のないファブレス(TSMCに製造委託)を選択することで、売上総利益率約75%という高収益を実現している。
2:開発環境(CUDA)による囲い込み
CUDAとは、GPUの計算能力を汎用的に(言い換えると、グラフィック用途以外にも)活用できるようにするソフトウエア。この開発環境はNVIDIA製のGPUにしか対応していない。高性能なNVIDIAのGPUを活用したうえで自分たちの思うように動かしたいと考えるユーザーの目線に立てば、NVIDIAの用意した開発環境が最も効率的であり、開発期間を大きく短縮できることになる。
NVIDIAはインセプション・プログラムというスタートアップ支援を積極的に行っている。2025年時点で25,000社以上のスタートアップがプログラムに参加するなど世界中のAI分野のスタートアップを支援しながら、最先端の技術トレンドへの感度を高めている。今後、データセンター市場の成長が鈍化する局面が来たとしても、次の成長市場である自動運転やロボティクスなどの多様な分野に事業をシフトすることで、今後も時価総額上位に君臨できるだけの戦略のしたたかさが窺える。