コングロマリット・ディスカウント

東芝が事業ごとに会社を3分割する方針を発表した。報道では、企業価値の向上を強く求める海外ファンドら「物言う株主」に歩み寄った形とも指摘されている。分割によるメリットとして挙げられるのが「コングロマリット・ディスカウント」の解消である。

「コングロマリット・ディスカウント」とは、多くの事業を抱える複合企業が企業価値を過小評価される状態を指す。では、なぜコングロマリット・ディスカウントは起きるのだろうか?

要因として、次のようなものが考えられるだろう。

  • 個々の事業に関するビジョンや事業戦略に関する情報開示の不足
  • 多角化に伴う、経営者の意思決定の負荷増大、組織構造の複雑化などによる経営効率の悪化
  • 優良事業のキャッシュフローが成長分野へ投下されない、または不採算事業が浪費する状態が続くなど、経営資源の配分が上手く進めないこと

今回の東芝の事業分割がどの程度のディスカウント解消につながるかは、数年後に資本市場が答えを出すことになるが、資本市場においては、企業は将来にわたって継続していく(ゴーイング・コンサーンと言う)前提で企業価値は算出される。

東芝が思惑通りに3分割されたとしても、経営陣がビジョンの実現に向けて、戦略的に経営資源を配分するとともに、その結果と見通しについて株主と真摯に対話する姿勢が求められることは、事業分割後も全く変わらない。 (弘)