今冬の世界各地の異常気象

今月、「10年に一度」の大寒波が日本列島を襲いました。天気予報で「〇年に一度」という表現で警報が出ると、その頻度の希少性から迫りくる異常気象への警戒感が増します。人類の人為的な行動がもたらした気候変動の恐ろしさにも思い至ります。

でも、もし、危機が過ぎ去ってこれまでの日常生活が戻ったとたん、人類の行動を省みる気持ちが薄まっていくのだとしたら、それはよろしくありません。実際、この1月は、気候変動による異常気象がほぼ毎日といってよいほど、世界各地で発生しました。危機は決して過ぎ去っていないのです。

エネルギー危機下での冬の到来を早くから懸念していた欧州は、1月にもかかわらず20℃を超える暖冬に見舞われ、1月の過去最高気温を塗り替えた国が8カ国に上りました。多くのスキー場では閉鎖や夏用コースの開設を余儀なくされています
米国では、いつものこの時期、雪で覆われるニューヨークが、雪の降らない冬記録を50年ぶりに更新しています。一方で、西海岸に目を向ければ、カリフォルニアでは、干ばつが一転し、豪雨による大洪水で大きな被害を受けました。
南半球に目を向けると、オーストラリアでは「100年に一度」の洪水被害が連日報道されています。先週には、お隣・ニュージーランドでも、ひと夏の降水量の8割近くがわずか16時間で首都オークランドに降り注ぎました。24時間で24.9ミリの降雨を記録しすっかり冠水したオークランド空港は閉鎖され、ちょうどその翌日着でターム留学にニュージーランドの旅立った娘の友人は、急遽オーストラリアで足止めされました。
日本を襲った大寒波も、日本に来る前には、ロシア(シベリア・トングラフ:Tongulakh)ではマイナス62.7℃(1月18日)、中国(漠河)ではマイナス53℃(1月22日)と、記録的な最低気温となり、マイナス34℃を記録したアフガニスタンでは、この寒波で160人以上の方が亡くなったと報道されています。

昨年、私が執筆をお手伝いさせていただいた日清紡ホールディングス「統合報告書2022」で、村上雅洋社長はこう述べています。

「異常気象は頻発しているけれども、毎日の天気が異常なわけではないという中で、目先の経済を最優先し、その上で余裕があればSDGs/ESGにも注力しよう、という考え方は間違いだ。」

そう。局所的に見れば、毎日の天気が異常なわけではありません。ここに、気候変動対応がゆるんでしまう大きな落とし穴があります。
気象情報は、局所的な情報に対するニーズが高く、天気は日々、変化します。それゆえなのでしょうか、世界各地で起きている異常気象について、日本ではあまり大きく報道されていません。もちろん、過度に不安を煽る報道はよろしくないと思います。でも、木を見て森を見ず、では、目先のことを最優先する思考はなかなか変わりません。

この1月は、国連から、元気の出る報告書も出ました。人為的な行動によって破壊されていたオゾン層が、2040年ごろには回復しそうだ、というものです。目先から視線を上げて、多少時間がかかってでも、より明るい地球の未来に向けて、一つひとつの行動を選択していきたい。そういう思いを強くして、2023年をスタートしています。

(佳)