ソニーとKADOKAWA、資本業務提携
ソニーグループは先月19日、KADOKAWAとの資本業務提携を発表、株式の追加取得によりKADOKAWAの約10%の株式を保有する筆頭株主となる。両社のプレスリリースには「KADOKAWAの豊富なIP(知的財産)と、幅広いエンターテインメントをグローバル展開してきたソニーの強みとを組み合わせることで、IP価値の最大化を目指す」と提携の目的が記されている。
ソニーのIP投資は、1988年の米国CBSのレコード部門の買収、1989年の米国映画会社コロンビア・ピクチャーズ社の買収に遡る。当時は「ハードを売るためには豊富で強いソフトが必要。ハードとソフトは車の両輪だ」という考えから経営判断が行われた時代。豊富なソフト資産を得たことで、その後のCDやMDのヒットにつながった。
その後のテクノロジーの進化によって、CDのようにハードウェア側でビジネスの場を押さえることが難しくなった。現在ではNetflix 等のプラットフォーマーによるコンテンツの有料配信サービスが拡大していることに加え、ソニーの映画「アンチャーテッド」のようにゲームのIPが映画で一定の成功を収めるなどグループ間のシナジー効果が得られたことなどから、ソニーグループは自社でコンテンツを抱えるIP投資に大きく資金を振り向けている。
コンテンツIPへの投資強化は、ソニーの財務諸表の数値にも表れている。無形固定資産(のれん含む)は2024年9月末で4兆2042億円と2020年度末比で約2倍に拡大した。一方、ソニーのエンターテインメント3事業(ゲーム、音楽、映画)を合わせた営業利益は2023年度7096億円と2020年度比で20%成長にとどまっており、財務諸表から見えるソニーは、エンターテインメント事業で成長基盤を作るための種まきの段階にあるのだろう。
世界のコンテンツ市場が220兆円ある中、日本の市場規模は12 兆円と横ばいの状況が続く。日本のコンテンツ産業が発展していくためには、世界市場の成長を取り込むことが不可欠である。今回のKADOKAWAとの提携効果も含めて、グローバル市場に事業を展開できる地域軸と、ゲーム、映画、音楽など複数のキャッシュポイントで稼げる事業軸を持つソニーグループの強みをフルに活かしてほしい。