ソニーがテレビ事業を合弁会社に移管する理由
ソニーグループがテレビ事業を分離し、中国テレビ大手TCLとの合弁会社に移管することが発表された。かつてテレビは、ソニーをはじめ電機メーカーにとって花形商品であった。家電量販店の入口を入れば、そこには各社のテレビがところ狭しと並べられていた。中でも、ソニーは独自のブラウン管方式で垂直方向にフラットな画面を実現した「WEGA(ベガ)」で高いブランド力を誇った。2000年代は液晶テレビが主戦場にかわり、ソニーも液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」にラインナップを切り替えて事業を継続したが、中国・韓国メーカーとの競争激化により長年にわたり赤字体質に苦しんでいた。
今回、ソニーがテレビ事業を切り離す背景として「収益性は依然厳しく、事業見直しは既定路線」との報道もあるが、事業の売却という手法ではなく、中国TCLとの合弁会社を選択したのはなぜか。理由は2つあると考える。
①テレビブランドの維持
ネット環境が整った現在、地上波放送の影響力は低下し、視聴の主戦場はネット配信へと移行した。しかしながら、リッチコンテンツの鑑賞には大型モニターとしてテレビを利用するニーズは根強い。(例えばネットフリックスの視聴端末のうち、テレビは約7割を占めている。)プレスリリースによれば、2027年に予定される合弁会社体制下でも、「ソニー」及び「ブラビア」の名称が継続使用されるという。商品企画・デザイン面において一定の影響力を行使できる体制を選択したと推察する。
②業績へのインパクトの軽減
液晶テレビの主要部品のうち、最もコストがかかるものが液晶パネルだ。製造原価の半分以上を占めているといわれる。液晶パネルは典型的な規模の経済が働く産業であり、かつては日本(シャープ等)や韓国(サムスン等)が市場をリードする時代もあったが、今では中国勢が市場を席捲している。パートナーとなるTCLは中国第2位のパネルメーカーといわれ、パネル製造から組み立てまで自社で完結でき、高いコスト競争力を持つものと推察される。加えて、合弁会社へのソニーの出資比率は49%であり、新会社は持ち分法適用会社となるため、ソニーグループへの業績には、合弁会社の最終損益の49%を反映することとなる。
これまでソニーは2014年PC「VAIO(バイオ)」事業の売却、2017年電池事業の売却、2021年アニメ配信会社クランチロールの買収、2022年ゲーム制作会社バンジーの買収、2025年金融事業のスピンオフと、機動的にポートフォリオの入れ替えを行ってきた。次のステップとして、スマートフォン事業にどのような手を打ってくるのか、資本市場も注目している。

