「ソニー」と「ソニーグループ」

コロナ禍の時代に、ソニーが資本市場で再評価されている。2021年3月期の純利益は過去最高の1兆円を突破する見通しで、時価総額も15兆円とITバブル期の水準を更新した。

ソニーの創業は、1946年5月7日。人間でいえば現在75歳で、後期高齢者医療制度の対象となるが、老いてますます盛んである。ここ数年のソニーの決算内容を見ると、半導体、ゲーム、音楽、映画、金融がバランスよく利益を生み出している。ソニーといえば、長年の間、ウォークマン、テレビ、ビデオなど「エレクトロニクス」部門が事業の柱であった。私がソニーでIR(財務広報)を担当していたITバブル期の2000年頃は、売上全体の75%を「エレクトロニクス」が占めていたが、現在、同部門の売上構成比は35%程度に留まる。

この事業の多様性の基礎を築いてきたのは、ソニー歴代の経営トップである。特に、盛田昭夫さん、大賀典夫さんが経営トップであった時代に種をまいた事業が今咲き誇っている。いくつか代表例を上げれば以下の通りである。

1968年:CBSソニーレコード設立(現在のソニーミュージック)

1979年:プルデンシャル生命との合弁会社設立(現在のソニー生命)

1989年:Columbia Pictures Entertainment Inc.買収(現在のソニーピクチャーズ)

1993年:ソニーコンピュータエンタテインメント設立(現在のソニーインタラクティブエンタテインメント)

そのソニーが2021年4月1日に社名を「ソニーグループ」に変更した。1946年の創業から75年経ち、「ものづくり企業」から「多様な事業を持つグループ」へ進化した姿を象徴している。ソニーグループが次の時代に向けてどんな種を植え、そしてどのような花を咲かせるのか、今から楽しみである。

 

(弘)