半導体の地政学的リスク

ロシア軍によるウクライナ侵攻をめぐる一連の報道に触れ、すぐに連想したことは中国による台湾侵攻の可能性である。この起こってほしくないシナリオに対して、米国政府は着実に手を打っているように見える。

台湾には半導体を受託生産するファウンドリーの最大手TSMCがある。微細加工の技術力は他社の追随を許さず、米国をはじめ世界中の半導体メーカーが製造を委託し、TSMCの存在なくしては世の中に製品を出せないほどである。

米国政府はTSMCに対して十分な補助金を出すことで、アリゾナ州フェニックスTSMCの工場を誘致することに成功。2024年には5ナノの生産ラインが稼働する予定である。TSMCにとっては、補助金だけでなく、GAFAMやTeslaなど米国内に半導体を使うアプリケーションが豊富にあることが工場設立の決め手になったと思われる。

一方、日本政府も補助金を出すことでTSMCを誘致することに成功。工場建設地はソニーがCMOSイメージャーを生産する熊本工場の隣接地を予定している。米国と異なるのは、TSMC単独ではなく、ソニーとデンソーが株主として出資する共同運営となる点である。画像センサーや自動運転など次世代モビリティの需要創出を日本からけん引することができるかどうか、TSMC誘致成功のカギとなるであろう。(弘)